心理学・脳神経学研究者のマシュー・リーバーマン博士は先月、「Social: Why Our Brains Are Wired to Connect」を出版しました。その本の中で、人間の脳が社会的なつながりを求める性質を生来的に持っていることを明らかにしています。ある研究では、人が欲求が満たされたと感じるときに活性化する「報酬系」は、10ドル(約980円)受け取ったときよりも10ドル寄付したときの方がより活発であることが判明しています。また、別の研究では、苦境にある誰かを慰めることが報酬系を活性化する方法であることも分かっています。男女のカップルによる実験では、女性が男性の手を握っているときに報酬系が活性化すること、さらにそれは男性が電気ショックのような痛みを与えられている場合により活性化することが明らかになっています。相手が愛情を必要としていることが分かる場合に、人間の脳はより活性化するのです。
リーバーマン博士と彼の妻ナオミ・アイゼンベルガー氏による共同研究は、社会性を失うこと、社会から拒絶されることは、想像以上に痛みを伴うものであることを示しています。この研究では、被験者にサイバーボールというインターネットゲームをプレイさせ、その後、脳の状態をモニターしました。実験の内容は、ゲームの中の2人のキャラクターとともに被験者はボールを順番にトスしていきますが、ある時点から、被験者だけが”仲間はずれ”にされボールが回されなくなるというものでした。この仲間はずれはゲームの世界での話であり、現実世界では何の損失もないのですが、被験者は傷つけられ、脳は痛みを感じることが分かりました。さらに、脳が痛みを感じる部位は、肉体的な苦痛を感じた場合にこの痛みを処理するために活性化する部位と同じであることが判明しました。このことから、脳が感じる社会的な痛みは肉体的な痛みと非常に似ていることが明らかになりました。被験者は、実験後にゲーム中で仲間はずれにされたことでどれだけ傷ついたかについての感想を尋ねられましたが、その疎外感が強ければ強いほど脳の肉体的苦痛を処理する部位はより活動的になっていたということです。2013.11.4 Gigazine