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【パーソナリティ心理学会】インタビュー企画21 聖心女子大 菅原健介先生

心理学には動物行動学的な関心から入ったわけですが,逆に,だからこそ人間の特殊性や複雑性というものも改めて客観的に考えるようになりました。日常的な光景なのですが,改めて考えると不思議だったのが,人前に出たときの人々の豹変ぶりです。自宅ではひどい恰好でくつろいでいます,出かける前には鏡のまえで身支度をして,服装や髪型や女性の場合にはばっちり化粧をして出かけます。家族に腹を立てていた母親が,かかってきた電話に出るなり,声が高くにこやかな表情になります。告白しようと心に決めて彼女を呼び出しても,顔を見るなり怖気づいてしまいます。
 こうした私と公の区別の明確さが人間ならではの特徴であり,それが人間のこの複雑な社会の根幹にあるような気がしていました。そして,こうした豹変の背景として,私と公の場面では人の心に何らかのモード変換が起きるのではないか。いわば,パブリックモードとプライベートモードとでもいうべき2つの心を人間は使い分けて,社会の中で必死に適応しようとしているのではないか,といったようなことを考えていました。そして,心理学の研究の多くが個人を対象としている限り,パブリックモード下での心の働きは分からないのではないか,ここに新たな研究テーマがあるかもしれないなどと勝手に妄想していましたが,この発想が私の研究の原点になっているように思います。2013.12.20 日本パーソナリティ心理学会

編集部