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認知機能と歯周病についての研究成果を公開

 

2025年3月14日
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学

研究成果のポイント

概要

 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らの研究グループは文献レビューを実施し、歯周病と認知機能についての関連や対策法を論文にまとめ、患者さん向けパンフレットを作成しました。この研究は、国立長寿医療研究センターと学校法人大垣総合学園大垣女子短期大学(学長:服部篤典)で実施している歯周病と認知症に関する研究の一環として実施され、研究成果は国際科学雑誌「BMC Oral Health」に2025年3月14日にオンライン版で掲載されました。

研究の背景

 口腔衛生習慣の改善により、虫歯(う歯)は減少してきました。 しかし、30歳以上の成人の約80%が歯周病にかかっていると言われており、歯の喪失原因の第1位です。歯周病は、細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯ぐき (歯肉)や、歯を支える骨が溶けてしまう病気です。また、歯周病は糖尿病や心疾患、脳血管障害や認知症にも関与すると言われています。

研究成果の内容

 歯周病と認知症には深い関係があります。歯周病によって認知症のリスクが増大します。また、認知機能が低下すると歯周病のリスクが増大します。そのため、認知機能が低下した高齢者には歯周病の対策が重要であり、以下の項目が推奨されます。

研究成果の意義

 認知症の発症リスクを軽減するためには、運動習慣や食事、社会活動などが推奨されています。歯周病対策も毎日の生活に関わる事であり、高齢者の口腔機能、摂食機能を維持するために重要な項目です。また、認知機能が低下してくると歯磨きなどが適切にできなくなってきますが、ご家庭では見過ごされていることが多いと思われます。歯周病の観点から、高齢の認知症の人の口腔ケアを改善する一助になれば幸いです。

研究成果の活用

 ご家族・患者さん向けに歯周病についてのパンフレットを作成しました。様々な方にご覧いただき、ご活用いただければ幸いです。今後、国立長寿医療研究センターの歯科口腔外科においても、このパンフレットを活用して、歯周病について患者さんやご家族へのよりよい説明に役立てる予定です。口腔ケアの重要性や口腔ケアをうまく行う方法を学んで、ご家庭で実践していただきます。高齢の認知症の人やご家族の方にとってより適切で実践しやすい口腔ケアの方法を探索する研究ですので、ご協力の程どうぞよろしくお願いいたします。

 本研究は、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター長寿医療研究開発費、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費:課題番号JP20K07861、JP23H03122、JP24K10546))、公益財団法人ダノン健康栄養財団、公益財団法人本庄国際奨学財団の支援のもと実施されました。

※研究グループ

国立長寿医療研究センター 病院

もの忘れセンター

センター長  武田章敬(たけだ あきのり)
副センター長 佐治直樹(さじ なおき)

国立長寿医療研究センター 研究所

研究所長 櫻井孝(さくらい たかし)

大垣女子短期大学 歯科衛生学科

学科長(教授) 松下健二(まつした けんじ)

論文情報


今回お伝えしたいこと

  • 歯周病があると、認知症になりやすくなります。
  • 認知症になると、歯のケアが不十分になります。
  • 歯周病を予防して、歯の健康を守りましょう。

歯周病とは

口腔衛生習慣の改善により、日本人の虫歯は減少してきました。

しかし、歯周病はあまり減少していません。

30歳以上の成人の約80%が歯周病にかかっており、歯の喪失原因の第1位です。

歯周病は、細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯ぐき (歯肉)や、歯を支える骨が溶けてしまう病気です。

参考:日本臨床歯周病学会ホームページ

歯周病はお口の中の細菌が誤嚥や血液を経由し全身へと流れ疾患を引き起こす。脳梗塞・誤嚥性肺炎・心筋梗塞・心内膜炎・動脈硬化・糖尿病・低体重児出産等

参考:日本臨床歯周病学会ホームページ 

 

先行研究

Cross-Sectional Analysis of Periodontal Disease and Cognitive Impairment Conducted in a Memory Clinic: The Pearl Study
当センターにおける先行研究(2023年)

  • もの忘れ外来を受診した183人の患者さんを調査しました(平均年齢79歳) 。
  • かかりつけの歯科がある人は、認知症の人で少ない傾向でした(84% vs. 68%)。
  • 残っている歯の数は、認知症の人で少なかった(21本 vs. 23本)。
  • 歯周病が重度であるほど、認知機能は低下していました。 

認知機能は歯磨きの仕方や適切な歯磨き習慣の継続力に影響している?

Saji N, et al. J Alzheimers Dis. 2023;96(1):369-380.

(ライオン歯科衛生研究所との共同研究で実施)

 

歯脳相関

歯周病と認知機能の関係性:歯周病により歯周菌の血流侵入や毒性・酸化ストレス、炎症の波及により認知機能を低下させ、セルフケアや歯磨き、口腔ケアの減少により歯周病となる。【歯周病の危険因子】年齢、遺伝子変異、歯磨き習慣の欠如、喫煙、糖尿病、血管障害、内服薬、ストレス【認知機能の危険因子】年齢、遺伝子変異、うつ病、喫煙、肥満、身体不活動、血管障害、教育歴

Saji N, et al. BMC Oral Health. 2025.​


患者さんやご家族の方へ

あなたのお口は大丈夫?

認知症が進むと歯磨きが難しくなります

例えば、トイレの形をきちんと認識できない

歯ブラシを適切に使えない

介護者や家族に言われたことが適切に理解できない

歯磨きを計画、準備して実行、あるいは介護者からの促しを理解して実行する、
これらの一連の動作に支障をきたす → 高齢の認知症の人には適切なサポートが必要

 

認知症が進むと歯科治療も難しくなります

  • 歯科治療するためには、診察台に座って姿勢を倒した状態を維持します。
  • 治療中は、口を開けたり閉じたりしますので、歯科医の指示を正しく理解 できなければ、歯科治療も難しくなります。
  • かかりつけ歯科をつくりましょう。
  • 口腔内の環境を整えることは今後の財産になるでしょう。

歯周病の予防(まとめ)

  • 正しい歯ブラシの方法で毎日実行しましょう(歯の表面を清潔にする)。
  • 歯石を完全に除去しましょう。
  • 傷んだ歯肉や骨を治療して健康に近い歯肉に戻しましょう。
  • 歯科衛生士によるクリーニングを定期的に受けましょう。

  • 適切な歯磨きをして歯周病を予防しましょう。
  • 80歳で20本の歯を残すことを目標にしましょう。
  • 歯周病を予防して、認知症予防も目指しましょう。

国立長寿医療研究センター もの忘れセンター/歯科・歯科口腔外科(写真提供)

リリースの内容に関するお問い合わせ

この研究に関すること

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長 佐治直樹
〠474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目730番地

  • 電話: 0562(46)2311(内線7940)
  • E-mail: sajink@ncgg.go.jp

報道に関すること

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 総務部総務課 総務係長(広報担当)
〠474-8511 愛知県大府市森岡町七丁目430番地

  • 電話: 0562(46)2311(代表)  
  • E-mail: webadmin@ncgg.go.jp

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