人々を自閉症とみなす社会――自閉症スペクトラム概念の拡大を考える 井出草平

本田秀夫『自閉症スペクトラム』では異なった捉え方をしている。内容紹介では「自閉症とアスペルガー症候群、さらには障害と非障害の間の垣根をも取り払い、従来の発達障害の概念を覆す『自閉症スペクトラム』の考え方が注目されています」と書かれている。日本では本田のように拡大された自閉症スペクトラムの解釈が紹介されることが多い。本田は典型的な自閉症ではないが、以下のことも自閉症スペクトラムに該当するという。「話が理屈っぽい」「食事中にテレビについ夢中になってしまう」「特定の作家の漫画に熱中する」「インターネットやSNSに熱中する」「女の子同士のグループでいつも行動することが肌に合わないと感じる」(本田 2013: 23)インターネットやSNSに熱中するのを自閉症スペクトラムだと言い始めれば、エセ科学の領域に突入する。要するに、インターネットの使いすぎは脳機能障害であるということだ。ゲーム脳などとほとんど変わらないレベルのデタラメさである。このようなことを書いている本田秀夫は無名な人物であれば「そういうことを言う人もでてくるだろう」で済む話なだが、彼は日本における自閉症の大家の一人である。2013.9.17SYNODOS井出草平


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