1960年までにリチウム・イミプラミン・ベンゾジアゼピン以外にも精神病薬が発見されましたが、その多くはある意味偶然の出来事から発見されたため、「なぜ病気に効果があるのか?」を説明する理論に欠けていました。その一方で、「精神障害は神経伝達物質の不安定な状態『化学的不均衡』が原因で引き起こされる」という、薬ではなく病気に関する理論は1950年代に発表されていたとのこと。1965年にはアメリカ国立精神衛生研究所のJoseph Schildkraut氏が、うつ病では脳内のノルアドレナリンが減少し、抗うつ薬はこれを増加させる作用がある、という内容の仮説を提唱、ついに「なぜ抗うつ薬はうつ病に効果があるのか?」という疑問を説明する理論が発表されたのです。SSRIは確かにセロトニンの濃度を増加する作用がありますが、そもそもセロトニンの減少がうつ病の原因であることの根拠はいまだに示されていないため、SSRIがなぜうつ病に効果があるのかは不明のままです。追い打ちをかけるように、うつ病の根本的な理論とされていた化学的不均衡理論が正確性に欠けると判明。うつ病や抗うつ薬の長年の研究からはっきりとしていることは、天の川の星の数よりも多くの神経を持ち、宇宙の中でも最も複雑なオブジェクトの1つである脳は、製薬にとってハードルが高すぎたという事実だけです。製薬会社が次々と神経科学研究施設を縮小・閉鎖しているのは、長年信じて研究を続けてきた「化学的不均衡」への信頼を失ってきている兆候とのこと。存在しないかもしれない「化学的不均衡」を信じて続けてきた研究も無駄骨になるかもしれません。フリードマン氏は「30年もの間信じられていた理論を覆すような、全く新しい新薬を開発するのは研究員にとって非常に困難であるし、莫大な費用がかかるんです」と述べています。2013.10.17 Gigazine
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