スクールカウンセラー経験のある臨床心理学者で同志社女子大学特任教授の中川美保子さんによると、『自分の思いを言えなかったり、人の意見に流されたりする子の存在が、先生たちの悩みの種になっている。・・・そうした子ども心のうちを探ると「意見を言うと後でどうなるか」という不安や失敗恐怖が渦巻いていることが多い。過去の否定的体験から自信が持てず、意見を言わない、あるいは周囲の意見に乗っかって何とか学校生活を送っている子どもは少なくない。』とのこと。
『親や先生が、彼らの抱える不安や葛藤に気付き、どう援助するかが問われている。「人の顔色ばかりうかがわずに、自分の考えを持とう」「自分の意見に自信を持って」と言ったところで彼らは聞く耳を持たない。なぜなら、彼らにとっては、何とか学校生活を送るために「やっとの思い」で獲得したのが、自分の思いを表に出さなかったり、周囲の意見に同調することだったりするからだ。彼らなりの必死のサバイバルスキル(生き残る技術)なのだから、そう簡単に手放すはずもない。意見を言った方がいいのは分かっているけれど、できないのだ。そんな精いっぱいの状況で振る舞っている子に、大人がもっと頑張れというメッセージを発しても、必死な彼らに期待に応えるエネルギーは残されていない。大人に求められているのは、彼らのそんな心の動きに気付いて認めてやることだ。そうせざるを得ない事情に思いが至れば、追い詰めるのではなく、なぜそうなっているか、子どもに柔らかなまなざしを向けることができるようになるはずだ。』と中川教授は話す。
2013.10.22 西日本新聞
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