米国ウィスコンシン大学のハンソン教授らの研究グループは11日、裕福層と貧困層では、乳幼児期の脳の成長速度に大きな差があるとの研究結果を発表しました。ハンソン教授らは、様々な経済的背景を持つ子ども達の脳を、誕生してから4歳になるまで追跡しました。この実験は、経済的背景が脳に与える影響を調べるために、妊娠中の喫煙・飲酒、頭部の怪我、家族の既往歴などの要因を排除した上で行われています。同氏らは、脳の成長速度を観察するためにMRIで脳の灰白質(Grey matter)に着目し、その量を調べています。灰白質(上図の緑色部)とは情報の統合処理を行う場で、中枢神経系の神経細胞が集まる部位(大脳で言えば皮質)です。追跡調査の結果、上グラフのように緑線の経済的地位の高い(High SES)家庭に生まれた子どもは、灰白質量の増加が著しいという結果が得られました。一方で、青線の経済的地位の低い(Low SES)家庭に生まれた子どもの灰白質量の伸びは相対的に鈍化していることが分りました。出生間もない次期の灰白質の量には大きな差がないものの、十数ヶ月を過ぎると明確に灰白質量に差が生じています。このような経済的背景による脳の成長速度の差の「直接的な原因」を明確にするのは難しく、親からのストレス・子どもの好奇心を刺激するようなコミュニケーションの欠如・玩具や絵本の不足などの様々な要因が複雑に絡み合った結果として、このような傾向が現れてくるものと考えられます。ハンソン教授らは、「脳の成長に必要なのは、コストのかかる特別な育児環境などではなく、手足を動かす遊びや、人とのコミュニケーションなど様々な経験を積むことのできる環境である」としています。2013.12.18 ガジェット速報
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