臨床心理士、信田さよ子さん(67)は、華やかな若者が集まる東京・原宿でカウンセリングセンターを運営し、ドメスティックバイオレンス(DV)や引きこもりをはじめ、家族関係の悩み、虐待などの相談に向き合ってきた。その信田さんの目に映る現在の東京、そして日本の社会は、この断崖のような「転落するかもしれない境目が、すぐ足もとにある社会」だという。どういうことなのか。たとえば以前なら、DVで苦しむ女性にはアパートを借りて生活保護を受給させ、その後仕事を見つけて自立する脱出モデルをためらいなく示すことができた。しかし今は違う。「昨日まで主婦で、特に資格もない女性が就ける仕事といえば、時給の低いアルバイトやパートか、せいぜい契約社員。これでは独立した生活はできない。逆にどんなに怒鳴られても殴られても、優良企業に勤める夫の妻でいれば子どもを大学にやれる。相談を重ねたのに、そんな理由で『やっぱり私が我慢します』と家に戻ってしまうケースがある。進むのも残るのも地獄。どちらの地獄の方がましか。この選択しか残っていない」2014.2.5 毎日新聞
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